栴檀

『栴檀集』巻頭句一覧 2002年5月~

☆2024年         
巻頭句
作者名
遠見するいつもの土手に彼岸花
佐藤和子
病室のスリッパの中の秋冷
岡本海月
鈍色の窓に張り付く寒さかな
川地清惠
紫の直ぐに消えたる冬の虹
公江耀子
寒造り丹波杜氏の無口なる
古西謙佑
夜半の雨閏二月の果てにけり
鈴木信子
裏山のえぐれ新し竹の秋
永田良子
葉桜を雨よけにしてあふぐ空
おおはしるみ
曲水に水輪広ぐる水澄
大野榮子
10
沢蟹や休耕棚田の崩れ道
杉原敏治
11
弔ひを終へし夜道や遠花火
金子多重美
12
☆2023年         
巻頭句
作者名
千木光る吉備の中山野分晴
神宮寺惠子
献立を言ひつつ口へ擦り林檎
橋本康子
笈摺をしづかに畳む冬紅葉
小澤敏
たまご酒ゆるりと喉を落ちにけり
酒井由起
冴ゆる夜の裸婦像駅のロータリー
中西彬
入学の児が匂ひ嗅ぐランドセル
小野純子
飛花落花心字池なる舫ひ舟
井本陽子
惜春やハモニカあまた遺されて
小林美惠子
カーネーションはや三年の母の留守
金子多重美
10
花桐や雨の瓦の黒々と
松田妙子
11
跳ねる虫飛ぶ虫這ふ虫夏の虫
日比野弘心
12
トイレからトイレが見ゆる鰯雲
菅原晋也
☆2022年         
巻頭句
作者名
かなかなや俳句教室推敲中
畑田一二三
友逝けり空埋めたる鰯雲
辻陽子
参道に明るさ拡げ銀杏散る
岡本海月
焼き餅の溜りの匂ふ競馬場
岡田幸弘
注連飾る廃校決まりし小学校
塚本富士子
羽毛散る鳩の骸や春の雨
井本陽子
うねる若布手繰りつ網に押し込める
長谷川知里
梁太き門前茶屋に春惜しむ
佐藤みさを
塩場てふ名のみ残れり姫女苑
長谷川栄子
10
一筆の金線走る鮎の腹
谷村たみこ
11
亡き夫へ鮎解禁の葉書くる
内古閑絹子
12
白桃の尻に小さき打ち身疵
水本摩利子
☆2021年         
巻頭句
作者名
長き夜の振り続けたる誘導棒
小林栄美
新築の匂ひとまざり蘭の花
溝辺百合子
コロナ禍の冬の満月揺るぎなし
鈴木将之
枯菊のほろほろ零れたき日和
髙橋真由美
鬼やらふ身に棲む鬼は庇ひつつ
梅田次郎
四温晴れポストにばさと栴檀誌
永田良子
句敵に会はず一年春惜しむ
立松修治
ゴンドラと猿すれ違ふ谷若葉
鈴木維久子
青き香と甘き香混じる木下闇
堀節子
10
病院食星形ゼリー添へられて
足立真澄
11
金物屋のヤカン西日を照り返す
長谷川知里
12
秋に入る雨に洗はる御嶽山
中島洋子
☆2020年         
巻頭句
作者名
月見むと病の床をずらしけり
近藤和子
ハンカチで包めるだけの栗拾ひ
杉山保子
初雪の伊吹隣は引越すと
林洋子
百歳の母花柄を春着とす
酒井礼子
川底にゆがむボールや冴返る
渡辺みち代
黒ずめる東寺の塔や春の雪
村田公彦
春塵や歩く人みな無口なる
近藤登
休校の校庭広き春の蝶
鯨眞木子
在宅の長引く卓に新茶かな
鈴木佳吉
10
山迫る一乗谷の蛍かな
松井栄子
11
ハンカチの木の花残し引越せり
長橋すま子
12
落ちてくる日ざしの記憶敗戦忌
市橋正俊
☆2019年         
巻頭句
作者名
燈火親し机の上の本と菓子
鈴木佳吉
秋高し木目出るまで戸を磨き
服部紀代子
鶏の羽搏き強き冬至かな
公江耀子
加速する一番列車初明り
畑田一二三
餌台に薄氷残る夕べかな
鈴木陽子
春間近口あんぐりと父逝けり
小林栄美
あをあをと風ながれをり花ミモザ
末澤美智子
芍薬のみつ滲ませて赤き蕾
粟野みねお
新緑の崖擦るかにロープウェー
永田良子
10
踏み分けて滝の上に出し蕗取女
後藤布久
11
雲の嶺手術終へたる人とゐて
西川昭白
12
戦闘機去り風鈴の鳴りにけり
杉山保子
☆2018年         
巻頭句
作者名
爽やかや手足の長き組体操
本田希子
捨舟にさざ波寄せる花芒
大野榮子
面結はふ長き藁縄榊鬼
安藤亮子
おづおづと犬撫づる子や花八つ手
鷹見美佐江
順々に奏でてみたき軒つらら
新田幸子
花月夜坂の途中で出す手紙
中谷佳南
遠富士や一人麦踏む一揆の地
大島文子
花冷えの床几に残るぬくみかな
佐藤みさを
鯉のぼり大漁旗を天辺に
立松修治
10
リハビリの庭に数へる沙羅の花
棚橋愛子
11
声失せし兄の目ぢから凌霄花
川島有子
12
ころがりて栗豊年をよろこべり
松田宏二
☆2017年         
巻頭句
作者名
擂鉢の町や底まで夕焼けて
林洋子
木の実拾ふおむつの尻を空に向け
小高麻理
朴落葉夫の足より大きかり
高山信子
水底に雲のゆらげる冬の川
土田冨美子
だしぬけに鴨鳴き合うて飛びたてり
道場啓子
人里に影を置く雲水温む
近藤磯子
火襖を追風煽る大野焼
上岡三江
たけの子の泥輝けり牧師館
古川がれき
聖五月校旗大きくはためける
鶴巻貴代美
10
鉛筆の筆跡光る薄暑かな
鈴木富子
11
哺乳瓶伏せたる厨明易し
安藤亮子
12
炎天や珊瑚敷き詰む玉陵
松尾雅之
☆2016年         
巻頭句
作者名
蜩の声聞くとなくミントティー
草薙郁美
翁の句ふと口に出て草の花
原田とも子
老老介護温めなおして冬至粥
上岡三江
書く前にぐるぐる冬のボールペン
中谷佳南
掌から掌へ紅き冬ばらケアホーム
平光多賀子
早き死を受け止めきれず亀の鳴く
大野正子
アップルパイ切り分けてゐる四温かな
池田賀子
やき鮎てふかろき菓子買ふ夏隣
篠田恵子
冷酒酌む退職記念錫の猪口
酒井国安
10
初蝉の寺町筋を鳴き通す
小川幹雄
11
掲げられ磴のぼり行く大茅の輪
山田たづ子
12
山靴を洗ふ庭中つくつくし
後藤布久
☆2015年         
巻頭句
作者名
浣腸に子の泣き止みぬ今日の月
酒井国安
藁灰を拂ひて秋刀魚食ひしこと
石槫茂臣
散紅葉橋の袂の投句箱
原田とも子
はんぶんこ覚えて蜜柑好きになり
池田賀子
青九谷すすきばかりをなげ入れに
木谷節子
葱畑へ大きく傾ぐ御油の松
大野公子
神の苑重き音して椿落つ
谷内瑞江
春寒し墨の色濃き三行り半
谷村たみこ
夏来る直球受くる子の構え
三輪和子
10
計らずも仲立となるはたた神
古田徹生
11
盆踊人に火影のゆらゆらと
石川純子
12
無人駅案内板に蝉の鳴く
江崎圭太
☆2014年         
巻頭句
作者名
虚子庵や紫苑の影が縁に揺れ
大島文子
ラフランス遺影の母に傾きて
栗田マリ子
参道へ焼き栗爆ぜて右往左往
長村雪枝
行き止まり先に広がる枯野原
古澤理代
去年今年馬穴に百合の開きけり
高野恵美子
枯草に鎌のほてりをさましをり
丹羽照子
花の渦生れては流る交差点
小林久恵
花冷えの手打ちうどんの噛みごこち
川島有子
蚕豆を好きになりたり綾子の句
福井順子
10
蛍見る雑念胸に閉ぢ込めて
伊藤千景
11
車椅子船尾に積んで涼しさよ
大野公子
12
菩提樹の風ゆるやかに秋立てり
永田良子
☆2013年         
巻頭句
作者名
佇めば波間に生まる秋の風
山内奈保美
山並みの一つ立山紫苑晴
服部紀代子
秋冷や波はひかりをたたみつつ
田辺浩美
まつすぐに風が来るなり冬木立
神谷千賀子
ごみ袋冬の地球に置いてくる
中谷佳南
ひとり居の起きて寒しや寝て寒し
佐々木光枝
昼過ぎに風の出でたる梅林
空華三千代
うららかや鳶の輪に入るグライダー
田辺浩美
涌水に煌めく砂や聖五月
三垣博
10
白絣形見となりて黄ばみけり
高橋公子
11
水饅頭匙にゆらりと結びの地
山内奈保美
12
夫の書括りてよりの秋思かな
浅野幸子
☆2012年         
巻頭句
作者名
本部席糸瓜の棚の下にあり
菅原晋也
菊人形いづこの姫や首を待つ
岩田恵子
茅門に降り積む黄葉尼の声
氏家知子
表具屋の紙の講釈日の短か
石槫みさ子
薄氷を踏みて至急の回覧板
谷内瑞江
春の水鯉の緋色の滲み出て
鳥居郁子
蓮の骨ぎいと鳴らして春二番
笠井智子
分水嶺さくら分かれて流れけり
荒木節代
窓若葉卓に小分けの離乳食
管原淑子
10
老眼鏡初めて掛けて黴を見る
高山信子
11
空壕を覆ふ真葛の幾重かな
山森米子
12
鳥居より奥宮までの草刈られ
廣田宏美
☆2011年         
巻頭句
作者名
木犀にきめかねてゐる旅衣
空華三千代
水引草城の空濠埋め尽す
森本明子
コンバイン雨の刈田に置きざりに
土谷和子
子規さんとふるさと同じ日向ぼこ
武市久栄
白き息路に流れて空に消ゆ
吉田奈央
退院しまづは雛を飾りけり
高田たみ子
アーメンと嬰の片言桃の花
後藤はるみ
一年生うなづく首の細きかな
水野恵里子
基地闘争跡地風紋灼くるかな
道場啓子
10
耶蘇谷や日のうすうすと黒椿
山本明子
11
師を思ふ渋塗団扇扇ぐ度
新田幸子
12
美濃和紙の団扇の風に子の眠る
中山幸代
☆2010年         
巻頭句
作者名
昼月の紛れ込みたる鱗雲
永原富枝
木犀や遠く住む子の誕生日
新田幸子
錆錆の奉納の鎌冬紅葉
奥村知代
綿虫の青きひかりを掬ひけり
河野尚子
髪伸びて母の退院冬桜
神谷千賀子
ふるさとの土持ちかへり木の実植う
吉田美津子
百歳も居て酌み交す花筵
高橋公子
大根の花の盛りを活け句会
角南知子
10
あめんぼの群を割りゆく遊び舟
新田幸子
11
暑き日に熱き茶を飲み一人なり
石川キヨ子
12
真夜中の灯りに鳴けり秋の蝉
木本益子
☆2009年         
巻頭句
作者名
陸蒸気のコークス匂ふ花野かな
水野恵里子
三叉路の一つは伊勢へ秋の蝶
宮崎やすお
秋天へ幹のよぢれし大檜
森本悦子
み吉野の藪を鳴らして雪時雨
服部祥子
舞殿に転がり込みし初霰
服部智恵
陶の雛手で温めて飾りけり
日々喜久枝
花吹雪ストレッチャーの患者にも
市瀬貞子
晩鐘の余韻にしだれ桜かな
木本益子
青梅を落とせる風に甥逝けり
高山信子
10
マイヨールの裸婦像抱き夏木立
森島紘子
11
飛魚の逆巻く波を突つ切れり
野口孝子
12
梅雨明や音といふ音皆ひびき
野口孝子
☆2008年
巻頭句
作者名
鷺草や刃物の町を通り雨
池田賀子
焼きたての煎餅かじる飛騨の秋
石橋三紀
羽ひらく孔雀秋気をふるはせて
石橋三紀
外つ国の言葉も混じる年の市
高橋公子
装束の袖引き絞り鍛冶始
鈴木信子
初音聞く満願堂へ磴半ば
細野芳子
起き抜けの一杯の水初雲雀
堀部教代
海鳴りに葡萄畑の芽吹かな
河野尚子
背に嘴に花びらつけて烏かな
山本明子
10
父の忌の白鷺わたる朝の空
冨樫苑
11
捩花に風の絡まる真昼かな
土谷和子
12
波音に紛れ遠雷近づきぬ
左高冨美
☆2007年
巻頭句
作者名
運動会白きうさぎの飛び出せり
高山信子
舞ふ鳶と川面打つ鳶秋闌ける
木村重子
綾子句碑沙羅の冬芽の輝きに
服部保子
鯛焼きのあつあつを抱き渡し舟
服部祥子
薄日よりこぼれて来たり春の雪
鳥居郁子
雛の日の靴散らばれる日向かな
田中英子
椿落つ深夜の空気動かして
野村かおり
出勤の空ひろびろと初ひばり
池田鶴月
金屏風に長き濃き影花楝
奥村知代
10
腕ほどの胡瓜下がれり薬草園
足立みどり
11
鳶とんで植田広ごる湖北かな
船田恵津子
12
大夕焼山間の村包みゐる
角南知子
☆2006年
巻頭句
作者名
霧込めの汽笛高鳴る揚子江
大平勝子
紙吹雪掛かる奈落の蜘蛛の糸
秀島みよ子
身に入むや鹿の角切る鋸の音
小畠和男
湯に通す芥子菜の色雪霏々と
佐野和子
散乱の机上そのまま春立てり
野口孝子
おぼろ夜や仁王の下に鹿眠る
五十畑文男
楮選る指先赤く腫れゐたり
遠藤典子
春塵の街物乞ひの蹲る
森島紘子
春寒き山に拾ひし鹿の角
池田鶴月
10
滴れる山へ一の矢放たれし
船田恵津子
11
涌水に頭突込む山椒魚
岡田幸弘
12
狛犬に立てかけてある捕虫網
森樹夫
☆2005年
巻頭句
作者名
両羽をつかみ鵜籠に押し込める
藤田佑美子
谷深き殉教の碑や独活の花
土川照恵
乱切りに大根を炊く妻の留守
石槫正徳
人声のかたまり来る冬桜
左高冨美
風に鳴る太き注連縄鵜捕小屋
早川都
濁り酒単身赴任も三年なる
大谷美保子
なきがらの母の手大き鳥雲に
藤田佑美子
鼠穴に杉の葉を詰め蚕小屋
宮崎やすお
髭あをき医師に診らるる虎が雨
和田珠
10
クローバの真白な花へ鶏放つ
鈴木和香
11
笹舟のゆきどころなき花藻かな
早矢仕元
12
野分晴通勤電車の富士の嶺
池田賀子
☆2004年
巻頭句
作者名
灯台へつづく夕日の芒径
細野芳子
熟れ胡桃むきてケルンに供へけり
土川照恵
身籠もりの子の弾くピアノ小鳥来る
石槫正徳
雪蛍枝折戸開き千代尼堂
塩井志津
大年の残照流る大河かな
清水雅子
残雪を踏んで母子の満願寺
安藤重子
茱萸の花寺へ行き來の切通し
永島きみ子
富士山を真北に仰ぐ立夏かな
市瀬貞子
病窓にナースと眺む大夕焼
日比野和子
10
鹿の子立つ若草山の明るさに
小林峰子
11
滑ひゆ酢の物にして盆の寺
佐野和子
12
網の目に鰓の食ひ込み鮎跳ねる
大野公子
☆2003年
巻頭句
作者名
雨こぼし芭蕉玉解く惟然の居
原口洋子
姥捨の段々畑りんご熟る
中島小美
赤彦の詠みし胡桃の落葉踏む
桑添礼子
堰越えし水春水と思ひけり
永原富枝
吊橋を杖つき渡る桜東風
店網奈津
風光る母が手縫ひの布リュック
古川昭子
葉桜の木洩日浴びる試歩の人
岡島國枝
10
熟れ麦の根元割り込み雉子潜む
服部保子
11
雲巖寺へ山百合の花盛りなる
野々山照子
12
首塚の石の扉や蝸牛
高見周子
☆2002年
巻頭句
作者名
しづり雪万両の実を飛ばしたり
角南英二
川中島春の白雲ちぎれとぶ
坂部尚子
筍掘り竹につかまり腰伸ばす
奥村知世
11
キャンプの子富士涌水に髪洗ふ
大平勝子

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